清原果耶さんが出演しているCMで話題の「(株)INPEX」。
皆さんの中には、
「CMを出している大きい会社みたいだけど、INPEXって聞いたことない」
「そもそも何をしている会社?」
と思う方も多いかと思います。
(株)INPEXは大手エネルギー開発会社ですが、業界になじみがない方も多いのではないでしょうか。
(株)INPEXも自社業界の認知度の低さを分かったうえでしょうか。
国民に事業内容を理解してもらうため、(株)INPEX自身がCM「INPEXは何してる?」篇を公開しています。
CMではタイトルの通り、INPEXが何をしている会社であるかを歌に乗せて、非常に簡潔にまとめています。
上記、CMで話題のINPEXですが、近ごろ株価が大きく上昇しています。
2026年1月16日現在(終値)では3,195円となり、一時500円前後まで下落していた2020年頃と比較すると約6倍にまで上昇しています。
この間に何があったのでしょうか。
本記事では、INPEXという企業のビジネスモデルを整理したうえで、なぜ株価がここまで上昇してきたのか、その背景を紐解いていきます。さらに、石油原油・ガス開発を取り巻く環境を踏まえながら、今後の見通しについても掘り下げていきます。

エネルギー業界は国を支える重要な役割を担っており、INPEXもその一つです。
普段生活する中でなじみがない業界ですが、そのビジネスモデルを知るだけでも投資の幅や視野が広がりますので参考にしてみてください。
1.そもそもINPEXとは?|日本最大のエネルギー開発企業
INPEX(インペックス)は、日本最大の石油・天然ガス・低炭素エネルギーの開発・生産を手がけるエネルギー企業です。
石油・天然ガス業界の事業は、石油・天然ガス等の資源を開発・生産を行う「上流」、生産物を輸送を行う「中流」、そして精製・販売を行う「下流」に分けることができますが、INPEXが主に担っているのは、この中でも最も源流にあたる「上流」分野です。
国内外で油田・ガス田の権益を保有し、地下に眠る原油や天然ガスを探し当て、開発し、生産・販売するまでを一貫して手がけています。
いわば、エネルギーの“原点”を押さえている企業だと言えるでしょう。

そしてもう一つ。
INPEXを理解するうえで欠かせないのは、国策企業※1であるという点です。
日本政府(経済産業大臣)が一定のINPEX株(黄金株)※2を保有しており、2026年1月16日現在は全体の21.9%ほどが政府によって保有されています。
これは、INPEXが、石油原油、天然ガスをはじめ、エネルギー安全保障という観点から、日本にとって極めて重要な役割を担っていることを意味します。
つまり私たちの生活や産業になくてはならないエネルギー資源の安定供給を根幹から支える存在。
それがINPEXです。
※1:国策企業とは、国の政策(国策)に沿って設立・支援され、国家の戦略的な目標達成のために運営される企業
※2:拒否権付株式のこと。株主総会決議事項や取締役会決議事項に対して拒否権を持つ株式。
2.INPEXの株価変動
2020年~2022年前半:原油価格の値動きに連動
以下は、直近5年間の①原油価格と②INPEXの株価の推移を示したものです。
このチャートを見ると、2020年~2022年前半ごろまでは原油価格の値動きに比例して、INPEXの株価も上昇していることが分かります。
INPEXは石油・天然ガスの開発・生産を主力事業としているため、原油価格の変動が業績、ひいては株価に直接的な影響を与える構造にあるためです。
2020年以降の原油価格上昇の背景にあるのは、新型コロナウイルスの影響による原油価格の下落による反動です。
2020年頃、世界は新型コロナウイルスの感染拡大により、経済活動が大きく制限されました。各国で移動制限や外出自粛が行われ、車の交通量は激減し、航空便は大幅に減便、工場の稼働も停止・縮小するなど、石油需要が急激に落ち込みました。
その結果、原油価格は一時的に歴史的な水準まで下落し、エネルギー需要の急減は、株式市場全体にも波及し、多くの銘柄が大きく値を下げました。
エネルギー関連企業であるINPEXも例外ではなく、原油価格の下落に引っ張られる形で株価は急落し、2020年には500円前後まで下落しました。
しかしその後、世界経済が段階的に再開されると、エネルギー需要は徐々に回復していきます。これに伴い、原油・天然ガス価格も上昇基調へと転じました。
こうした資源価格の回復を背景に、INPEXの業績も改善し、2020年には500円前後だった株価は、2022年には一時1700円台までその値を回復し、株価は上昇の局面を見せました。
■原油価格の推移

(出典:SBI証券 WTI原油先物 チャート図)
■INPEX株価の推移

(出典:SBI証券 INPEX チャート図)
2022年後半~:INPEXの企業力強化に伴い上昇
しかし、2022年後半以降のINPEX株価の上昇は、原油価格の値動きでは説明がつきません。
2022年前半から原油価格はその上昇が伸び悩んでいるにもかかわらず、INPEX株価はその後も力強い上昇を見せています。
2023年以降は1,500円台を回復し、直近では3,000円を超える水準まで上昇しています。
これは、原油価格の高騰とは異なる要因があると考えられ、INPEXの本質的な企業力が評価されていると考えられます。
それを読み解くため、INPEX株価上昇の本質的理由を次の章で説明します。
3.INPEXの株価上昇要因|3つの本質的理由
①原油・天然ガス価格の高騰という最大の追い風
前章でも記述しましたが、INPEXの業績は、原油・天然ガス価格と極めて高い相関を持っており、近年の株価上昇の最大要因は、資源価格の高騰であることは間違いないでしょう。
ウクライナ情勢を契機に、エネルギー供給に対する不安が世界的に高まり、原油やLNG(液化天然ガス)の価格は構造的に高止まりしました。
これは、INPEXは資源を開発・生産する供給側であるため、原油価格高騰は業績に追い風となり、その業績好調の期待感からも株が買われ、価格株価上昇につながったのです。
②イクシスLNGなど大型プロジェクトの安定稼働
INPEXの中核プロジェクトである、オーストラリアのイクシスLNGプロジェクト※は、同社のキャッシュフローを支える屋台骨といえる存在です。
立ち上げ当初はコスト超過などを背景に懸念の声もありましたが、2018年10月に生産を開始して以降、INPEXの原油・ガス生産量は約1.5倍に拡大し、現在では安定稼働フェーズに移行しています。その結果、同プロジェクトは同社にとって安定した収益源となっています。
こうした事業の安定化と将来への安心感が投資家の評価を高め、「買い」姿勢が強まったことも、株価上昇の一因と考えられます。
※イクシスLNGプロジェクト:
INPEXが手掛ける日本企業初のLNG大規模プロジェクト。オーストラリア北西部沖合に位置する「イクシス・ガス・コンデンセート田」を開発し、ノーザンテリトリー準州の州都ダーウィンでLNGを生産・出荷する事業です。
LNGとは?
天然ガスを約マイナス162℃まで冷却して液体にしたものです。(LNG:Liquefied Natural Gas、日本語では「液化天然ガス」)。体積を大幅に縮小できるため輸送に適しており、日本では火力発電の燃料や都市ガスの原料として広く利用されています。
参考:史上初・日本企業による大型LNGプロジェクトがついに生産・出荷を開始!|エネこれ|資源エネルギー庁
③株主還元強化策への期待感
2025年2月に公表された「2025-2027 中期経営計画」では、株主還元方針として以下の基本方針が示されています。
・累進配当による安定的な株主還元(1株当たり年間90円程度)
・機動的な自己株式取得
・総還元性向50%以上を目指す
これらの株主還元策が強化されたことに加え、中期経営計画の中で明確な指針として示されたことで、株主からの信頼感が高まり、INPEX株への評価が見直され、株価上昇につながったと考えられます。
4.リスクと今後の見通し
INPEXは「事業等のリスク」として複数の項目を開示していますが、ここではその中から、特に投資判断に直結しやすいポイントに絞って整理します。
参考:事業等のリスク | INPEX
INPEXへの投資を検討するにあたっては、以下のようなリスクを理解しておくことが重要です。
(1)原油価格の下落リスク
(2)為替変動リスク(円高リスク)
(3)脱炭素・エネルギー転換リスク
⑴ 原油価格の下落リスク
INPEXは、石油・天然ガスの開発・生産を行う「上流」事業を主力としているため、原油・天然ガス価格の変動が業績に直接的な影響を与えます。
地政学リスクや世界的な景気後退、またウクライナや中東諸国での紛争の動向によってエネルギー需要が減少した場合、資源価格は下落し、売上高や利益が短期間で大きく減少する可能性があります。
その結果、株価にもマイナスの影響が及ぶ点は避けられません。
⑵為替変動リスク(円高リスク)
INPEXの事業は海外における探鉱・開発プロジェクトが中心であり、収益の多くは米ドル建てで計上されています。そのため、円高が進行すると、円ベースの売上高や利益は減少し、逆に円安時には円ベースの売上高や利益は増加します。
同社の試算によると、米ドル/円の為替レートが1円変動すると、外貨建て売上および原価の増減を通じて、2025年12月期の損益は年間約24億円増減するとされています。
つまり、原油価格が一定水準を維持していたとしても、為替環境次第では業績が市場予想を下回る可能性がある点には注意が必要です。
⑶エネルギー転換リスク(脱炭素化)
現在、環境への配慮や各国の政策を背景に、脱炭素社会への移行が進んでいます。
再生可能エネルギーの普及が進めば、中長期的には化石燃料への需要が徐々に減少する可能性があります。
INPEXは現時点では石油・天然ガス事業が収益の中核であるため、エネルギー政策の方向性によっては、将来的に企業評価へマイナスの影響が及ぶことも想定されます。
一方でINPEXは、INPEX Vision 2035において「責任あるエネルギー・トランジションの実現」を掲げ、低炭素化を見据えた取り組みを進めています。
同社は、既存の石油・天然ガス事業で得た収益を成長投資に回し、安定供給と脱炭素の両立を図る方針を明確にしています。
今後の見通し
上記のように、INPEXを取り巻くリスクは複数存在しますが、同社は国のエネルギー需給を支える極めて影響力の大きい企業でもあります。
また、INPEXが担うエネルギー安全保障の重要性は、今後も大きく変わらないでしょう。
そのため、再生可能エネルギーへの移行が進む中においても、石油・天然ガスは「移行期のエネルギー」として一定の役割を担い続け、「移行後のエネルギー」需給においても、INPEXが中心的な役割を果たし、日本のエネルギー供給を支えていく可能性は高いと考えられます。
つまり、INPEXは短期的な株価の変動に一喜一憂する銘柄というよりも、資源価格のサイクルや業界構造を理解したうえで、中長期視点で向き合う投資対象だと言えます。
INPEXは5期連続で増配を続けており、配当利回りも4.48%(会社予想)とされており、株主還元への政策も積極的に進めている企業です。
以上のように、事業領域の重要性や国策企業としての安定性、そして株主への還元性を踏まえると、長期保有を前提とした投資先の1つとして検討する余地は十分にあるでしょう。
投資する際、初めに身近な企業やよく知っている企業から株価を調べ、投資を検討することが多いかと思います。
一方で、INPEXのように一般消費者には直接なじみが薄いものの、社会インフラを支える大企業については十分に理解されないまま、そもそも投資の選択肢から外れてしまっているケースも少なくありません。
普段なじみのない企業のビジネスモデルや強みを知ることは、投資の幅を広げ、より本質的な判断を行うための大きな助けになります。
ぜひ本記事でエネルギー業界への理解が深まるとともに、普段なじみのない業界を知ろうとするきっかけにしていただけたら幸いです。
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