皆さんは、ご自身の健康にどのくらい気を使っているでしょうか。
日々の生活の中で、食事や運動に気を配っている方は多いと思います。
しかし、「今の自分の体は健康なのだろうか」「将来、子どもを持つことができるだろうか」と、不安や疑問を感じてはいるものの、自身の健康状態が将来の妊娠や出産にどのように影響するのかまで、具体的に把握している人は意外と少ないのが現状です。
「まだ先のことだから」と後回しにしてしまい、気づいたときには選択肢が限られていた――というケースも少なくありません。
こうした背景の中で、近年注目されているのが「プレコンセプションケア」です。

プレコンセプションケアとは、「自分自身の健康状態を見直し、将来の妊娠・出産に備えて生活習慣や知識を整えていく取り組み」のことを指します。
妊娠を予定している人だけでなく、将来に備えて自分の体を知っておきたい人にとっても、とても重要な考え方です。
本記事では、プレコンセプションケアの概要や具体的な取り組み方法に加え、助成金制度、さらにお金や人生設計との関係まで、実体験も交えながらわかりやすく解説していきます。
1.プレコンセプションケアとは?
プレコンセプションケアとは、「自分自身の健康状態を見直し、将来の妊娠・出産に備えて生活習慣や知識を整えていく取り組み」です。
単に生活を整えるだけでなく、正しい知識を身につけたうえで、将来のライフプランまで見据える点が特徴です。
また、一般的にイメージされる「妊活」とは異なり、妊娠を前提とした短期的な準備ではありません。もっと長期的な視点で、自分の体と向き合う“健康への先行投資”と捉えることができます。
プレコンセプションケアの主な目的は以下の通りです。
・将来の妊娠、出産におけるリスクの低減
・現在の健康状態の把握
・生活習慣の改善(食事・睡眠・運動など)
・男女ともに生殖に関する正しい知識を身に付ける
これらを通じて、「知らなかったことによるリスク」を減らし、将来の選択肢を広げることができます。
2.プレコンセプションケアの実施方法
プレコンセプションケアは、特別なことをするというよりも、「自分の体を知り、整えること」から始まります。
そのために以下の手順に沿って、自身の体の状態を知るとともに適切なケアをすることができます。
①健康状態の把握(プレコン・チェックシートの活用)
国立成育医療研究センターが提供する「プレコン・ チェックシート」を使い、自身の健康状態や生活習慣を把握します。
女性用・男性用それぞれが用意されており、項目に沿って確認することで、気づかなかった課題に気づくことができます。
②生活習慣の見直し
プレコンチェックシートの内容に基づき、自身の現状を把握した後は、日々の生活を整えていきます。
主なポイントは以下の通りです。
- 食事と栄養:1日3食を基本にバランスよく食べ、葉酸(1日400μg)※を意識して摂取する
※参考:「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」(厚生労働省,2021年3月) - 適正体重の維持:急激な体重変化は体に悪影響がある(特に女性は排卵異常に繋がる)ため、BMI(18.5〜25未満)を適正に保つ
- 運動:1日約60分・8000歩目安※の身体活動を意識する。
※参考:厚労省 健康づくりのための身体活動・運動ガイドライン(2023年改訂)より) - 禁煙:喫煙は不妊、流早産や低出生体重児のリスクを高めるため禁煙し、受動喫煙も避ける。
- 禁酒:特に妊娠中の飲酒は流産や先天異常などのリスクを高めるため、飲酒を控える
- 睡眠とストレス:十分な睡眠を確保し、ストレスを溜め込まない。
③検査やワクチンを受ける
健康や生活習慣にかかる様々な検査を受けることで、体の状態を把握するとともに、自身では気づかない、より詳細な体の状態を知ることができます。
検査項目としては、血液検査、卵巣年齢検査、抗体・感染症検査、甲状腺機能検査等があります。
また、ワクチンを打つことで、妊娠中にかかると、赤ちゃんに影響を与える恐れのある感染症を予防することができます。
ワクチンの種類としては風疹、麻疹、水痘(みずぼうそう)、流行性耳下腺炎等があります。
女性だけでなくパートナーや家族も検査やワクチンを実施して、自身の健康状態を再確認し、妊婦さんに感染させない環境づくりをすることが大切です。

上記検査やワクチンは、指定された手順を踏むことで、実施した検査の費用が最大30,000円助成されます。
詳しくは、第3章「助成金申請の方法」を確認して下さい。
④医療機関の受診
かかりつけ医を持つことで、日常的な健康管理から将来の不安まで相談しやすくなります。
特に女性は、婦人科医を持つことで、月経や生理、不妊治療や子宮頸がんのワクチン接種や検診等、ライフプランに合った適切なケアをしてもらうことができます。
妊娠や出産にかかる不安を減らし、自身の健康と向き合う準備をしておきましょう。
⑤ライフプランを考え共有する
人生には、就職、転職、結婚、妊娠・出産、育児、介護等、様々な出来事があります。
「何歳でどのような生活をしたいか」、「どのようなパートナーや家族と過ごしたいか」、「いつ妊娠・出産したいか」など、自分なりの理想の人生プランを計画してみましょう。
また、このプランをパートナーや家族と共有することで、お互いの理解が深まるだけでなく、実現に向けた行動につなげやすくなります。

健康や生活習慣をそれぞれ見直し、お互いの人生プランを一緒に考えてみましょう。日々の生活の中で共に行動に移すことで実現性も高まり、人生の満足度も高めることができます。
上記実施方法は、国立成育医療研究センターが提供している「プレコンノート」に基づく5つのアクションを参考にしておりますので、ぜひ一度確認してみてください。(P.6-17)
(参考)プレコンセプションケア実施の体験談
以下は、周りの友人や知り合いで実際にプレコンセプションケアを実施した方の体験談です。
プレコンセプションケアを「やってみてよかった」という声が多いのが印象的でした。
【20代女性】
プレコンセプションケアを実施したことで、自分の体の状態を客観的に把握できるようになりました。その結果、妊活だけでなく日常生活そのものを見直すきっかけにもなりました。「知らないままでいること」が一番のリスクだと実感しました。
【30代女性】
将来の妊娠・出産に備えて検査を受けました。パートナーと一緒に取り組むことで、これまで知らなかった知識を得ることができ、人生設計そのものを見直す良い機会になりました。
3.助成金の対象者や申請の流れ
第2章でご紹介した、プレコンセプションケアの実施方法「③検査やワクチンを受ける」に関連して、東京都ではプレコンセプションケアを後押しするために、検査費用の助成制度が用意されています。
助成金の対象者や申請の流れは以下の通りです。
3.1 対象者
東京都が定めている助成金の対象者は以下の通りです。
(1)講座受講日から申請日までの間、対象者(検査、助言・相談を受ける方)が継続して東京都の区域内に住民登録していること。
(2)検査に係る初診の日における対象者の年齢が18歳以上40歳未満であること。
3.2 申請手順
上記対象者に該当する方は以下の手順に沿って、申請を行うことで、東京都から助成金を受け取ることができます。
①「TOKYOプレコンゼミ」を受講
東京都では、プレコンセプションケアの普及を目的として「TOKYOプレコンゼミ」を実施しています。
このゼミでは、医師や専門家による講義を通じて、妊娠・出産・健康に関する正しい知識を体系的に学ぶことができます。
主な内容は以下の通りです。
・妊娠と年齢の関係(年齢によるリスクの変化)
・男女それぞれの健康管理の重要性
・生活習慣(食事・運動・睡眠)が妊娠に与える影響
・ストレスや働き方と健康の関係
なお、令和7年度のTOKYOプレコンゼミは募集を終了しています。

令和8年度のTOKYOプレコンゼミの開催日時・申込方法等の詳細は、令和8(2026)年度歳入歳出予算が東京都議会で可決された後、東京都の福祉局のHPで順次発表予定とのことです。
②指定医療機関で対象検査を受ける
東京都が定めている登録医療機関において、対象の検査及び検査結果を踏まえた助言・相談を受けます。
登録医療機関のリスト及び、対象の検査項目は以下の通りです。
登録医療機関リスト(令和8年3月17日時点:155件)(Excel)
【対象となる検査】
| 男性 | 女性 | |
| 必須検査 | 尿検査(たんぱく、糖) 血液検査(Fe、TP、コレステロール、糖、腎機能) 麻しん抗体検査 | |
| 選択できる検査 | B型肝炎検査 C型肝炎検査 感染症検査(梅毒、淋病、クラミジア、HIV) | |
| 精液一般検査(精液量、精子濃度、総精子数、白血球数、 総運動率、前進運動率、正常精子形態率) 精液精密検査(DFI検査) 男性ホルモン検査(テストステロン、LH、FSH、プロラクチン) 精巣超音波検査 | AMH検査 甲状腺ホルモン検査 経膣超音波検査(子宮サイズ、卵巣サイズ、腫瘍有無、嚢胞多い少ない) 女性ホルモン検査(エストロゲン、プロゲステロン、LH、FSH、プロラクチン) | |
③アンケートへ回答
検査受検後に東京都が実施するアンケートに回答することが、助成金申請の要件です。
回答は以下のフォームから行うことができます。https://logoform.jp/form/tmgform/preconceptioncare_questionnaire
アンケート内容は、受けた検査項目や受診した医療機関の対応に関する事項等、31項目ほど設けられています。(2026年3月26日時点)
アンケートに回答後、次ステップ「④助成金の申請」を行うことができます。
④助成金の申請
上記ステップをすべて実施した後、助成金の申請を行います。
申請は以下フォームから行うことができます。https://logoform.jp/form/tmgform/preconceptioncare
なお、電子申請サービス「LoGoフォーム」を通して、申請することができます。申請にはアカウントが必要となりますので、持っていない方は新規登録が必要になります。
⑤検査費等の費用の受取
東京都にて申請内容の審査後、申請者へ検査費などの費用が支払われます。
助成額は、男女ともに上限3万円です。
※上限額を超えた分は自己負担となります。
※助成対象となるのは、初診料、再診料、助言・相談料、②でご紹介した対象となる検査に係る費用です。

国立成育医療研究センターではTOKYOプレコンゼミ受講者向けプランも用意されています。
用意されたプランの検査は全て、助成金申請対象の検査であり、どの検査を受けるべきかがわかりやすくなっているため、確認してみてください。
「TOKYOプレコンゼミ」受講者向けプランについて | 国立成育医療研究センター
4.プレコンセプションケアのメリット・デメリット
プレコンセプションケアは、自分の体と向き合う大切な取り組みですが、始める前にメリットとデメリットの両面を理解しておくことも重要です。
ここでは、それぞれを整理してみましょう。
4.1 メリット
・将来の妊娠や出産に関するリスクを事前に把握できる
・自分の健康状態を客観的に知ることができる
・生活習慣を見直すきっかけになる
・助成金制度を活用することで、費用負担を抑えられる
・パートナーと将来について話し合うきっかけになる
プレコンセプションケアの最大のメリットは、「知らないことによるリスクを減らせる」点です。
たとえば、健康状態や体の特徴は人それぞれ異なります。事前に知っておくことで、妊娠や出産に向けた準備を早めに進めることができ、結果として将来の選択肢を広げることにつながります。
4.2 デメリット
・検査や通院のために時間を確保する必要がある
・検査結果によっては、不安やストレスを感じる可能性がある
・最初の一歩を踏み出す心理的ハードルがある
特に、忙しいサラリーマンにとっては、時間の確保や通院の手間が負担に感じることもあるでしょう。また、検査結果によっては、自分の体に対して不安を感じこともあるため、検査を受ける前には十分な心の備えが必要ケースがあります。
上記の通り、デメリットは確かに存在しますが、「知らないままでいるリスク」と比べると、決して大きなものではないと私は感じます。
むしろ、早い段階で自分の体の状態を知ることで、必要な対策を講じることができる点は大きなメリットです。
将来になってから後悔するのではなく、今のうちに一歩踏み出しておくことが、結果的に安心につながるのではないでしょうか。
5.プレコンセプションケアは”将来の自分への先行投資”
妊娠や出産は、人生の中でも大きなイベントです。そして、そのタイミングはキャリアやお金とも密接に関係しています。
特にサラリーマンにとっては、生活費や税金、将来の貯蓄などを考えると、「必要だと分かっていても後回しにしてしまう出費」は少なくありません。
だからこそ、公的制度を上手に活用しながら、「将来の自分への先行投資」としてプレコンセプションケアに取り組むことが重要だと感じます。
上記のようにプレコンセプションケアに対する助成制度が一部の対象者に設けられています。
もし助成制度の対象者に該当する場合は、この制度を活用することで、自己負担を抑えながら必要な検査を受けることが可能です。
まとめ|未来の選択肢を広げるために今できること
プレコンセプションケアは、「妊娠のため」だけではなく、「自分らしい人生」を選択するための準備です。
忙しい日々の中で後回しにしがちな健康ですが、少し立ち止まって自分の体と向き合うことが、将来の安心と選択肢の広がりにつながります。

大切なのは、完璧を目指すことではなく、「知ること」「考えること」「一歩踏み出すこと」です。
ここで、私自身が特に印象に残ったエピソードをご紹介します。
最近、妊活を予定している友人が検査を受け、実際に助成金を申請したという話を聞きました。
その友人は、「自分自身の健康状態や妊娠・出産について、改めて考えるきっかけになった。妊娠を望んでいる人だけでなく、将来の自分の健康のためにも、この助成金制度を活用して検査を受けるべきだと思う」と話していました。
中でも心に残ったのは、「もっと早く知っておけばよかった」という一言です。
この言葉から、将来の体の変化に備えるためにも、早い段階で自分自身の健康と向き合うことの重要性を改めて感じました。
上記ご紹介した通り、助成金制度などを活用することで、お金の負担を抑えながら始めることも可能です。
まだ検査を受けていない方は、ぜひこの制度を活用し、一度ご自身の健康や生活習慣に向き合ってみてはいかがでしょうか。


コメント